第13回 確率の低いほうに賭けることが合理的?(暴落時に買い向かう時の思考法)


暴落時に買い向かう時の思考法で極めて秀逸な考え方をご紹介いたします。私自身実践済みです。あなたは「確率の低いほうに賭けることが合理的である事がある」という事実をご存知ですか?

この、数学的に考えて到底あり得なさそうなについて、今回はお話ししたいと思います。

昨今、米国株市場が下落基調で、多くの投資初心者の皆様は不安を感じてらっしゃるかも知れません。あるいは、ベテラン投資家の中には下落をチャンスと捉えて、買い場を探してらっしゃるかも知れません。経験豊富な投資家の皆様には釈迦に説法ですが、しかし下落局面で買い向かうのは、なかなかに難しい事ですよね。特にメンタル面で。

そうした中で、下落局面において非常に積極的に、しかも冷静に買い向かえる動機が得られ、なおかつメンタルをも納得させられる、極めて秀逸なある考え方を今回はご紹介したいと思います。それは、ある著名な投機家(Speculator)の方(お名前は忘れました)が実際にある取引を決断するにあたって用いた思考法です。これこそが確率の低いほうに賭ける思考法です。

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昔々、この著名投機家は、ある投資対象(仮にAと名付けましょう)について買うタイミングを測っていました。

彼には超絶優秀なスタッフ達がいて、いずれも頭脳明晰で抜群の調査・分析能力および洞察力を誇り、彼はみずからのスタッフ達がもたらす調査結果に絶大な信頼をおいていました。

ある日ある時、彼のスタッフのひとりが投資対象Aについて次のような報告をしました。

スタッフ:「明日、Aは90%の確率で値下がりし、10%の確率で反転上昇すると見られます」

なるほど、圧倒的に値下がりする可能性が高いわけですね。これはまだ買いタイミングではない、と判断するのが当たり前でしょう。

スタッフの報告を聞いたこの著名投機家は、、、買い控えるのみならず、積極的にAの空売りでも仕掛けようと決断したかもしれませんね。なんてったって明日Aが値下がりする可能性は90%なのですから。

この問題を考えるにあたって、特に注意していただきたいのは、彼はみずからのスタッフの調査結果に絶大な信頼をおいていたという点です。

彼は、みずからのスタッフの調査結果を深く深く信頼するがゆえに、、、何と!Aを大量に買い向かうことを決断したのです!いったい全体どうして?

彼は、Aが反転上昇する10%の確率に注目したのです!彼の自慢のスタッフ達が出した数字です。その数字は極めて信頼性が高い!と彼は思いました。「もはや10%もの確率があるのなら、ここは買いだ!」と彼は決断したのです!果たして翌日、幸運なことにAは爆上がりし、この著名投機家は莫大な利益を得ることに成功したのでした。

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さあ!あなたは、以上の話の本質がご理解いただけましたでしょうか? 私はこの話を読んだ時「保険の発想だ!」と直感すると同時に、この投機家の発想の秀逸さに驚嘆しました!たとえば保険は、途轍もなく小さい確率の事象に(ある意味)賭けて保険料を支払うわけです。

たとえば仮にもしも明日、あなたの家が火事になる可能性が10%もある!しかもこの数字の信頼性は極めて極めて高い!とあなたが仮に確信したなら、あなたは間違いなく大急ぎでネット火災保険に申し込み、保険料を今日の営業時間内に間に合うように速攻で振り込むことでしょう!この著名投機家の発想はまさにこれと同じです!

この発想を、暴落局面における買い向かいに応用してみましょう。

今仮に、株価はすでに30%近く暴落しており、毎日毎日下落し続けているとします。この時にこう考えるのです。「ここ最近ずうっと毎日、株価は下落し続けている。この流れだと、明日も9割がた値下がりするだろう。しかし1割の確率で反転上昇するかも知れない。もし反転上昇してしまったら、今のようなバーゲン価格で株を買うチャンスは永久に失われてしまうだろう。もし明日反転上昇する( = 安く買うチャンスが永久に失われる)可能性が10%もあるなら、これはもしもに備えて今買っておくべきだ!」

10%の可能性で反転上昇する。これの意味するところは、、、とりあえずまだ明日は値下がりするかも知れないし、明後日も値下がりするかも知れない。ついでに三日後も値下がりするかもしれない。けど、10にひとつの確率で当たるくじを毎日引き続ける訳だから、そのうち当たりに突き当たるのは、もはや時間の問題だ!という発想です。言わばいつ来るか分からない反転上昇する10%の可能性を恐れる思考法とも言えます。

実際に私は、2020年のコロナ暴落で比較的底に近いところで買い向かった時は、この発想法で買いを決断しました。(もっともその時手元には大したキャッシュはありませんでしたが 笑)

以上が「確率の低いほうに賭けることが合理的である事がある」という謎についてのお話でした。そしてお話からお分かりのように、以上の思考法は、暴落時に買い向かう際にメンタルに対してけっこう有効にワークします。

ちなみにこの思考法で買い向かう場合は、株価が暴落前最高値からドルベースで最低でも20%以上(できれば30%以上)下落した場合にのみ用いることを私はお勧めします。なぜなら、それくらいの下落で買い向かえたなら、仮に株価がそこからさらに下がったとしても、長期的目線で「あの時私は充分に価値のある買い向かいが出来た」と、遠い未来の自分から評価してもらえるからです。

なお以上の議論は、今まさに資産形成の真っ最中で積立投資をしている若い皆様には残念ながら当てはまりません。そのような皆様がやるべきことは、今やっている積立投資を(天が落ちようが、地が裂けようが)ただひたすら間違いなく継続する事が最善の勝利への道です。

もしも、未投資の銀行預金がそれなりの規模でまだある方は、以上で紹介している思考法で暴落時の買い向かいにぜひ挑戦しましょう!暴落時の買いこそは(単なる勝利ではなく)大勝利が確定された買いなのですから!とりあえず – 20%の下落が確認できたら少しずつ買い始めると良いと私は思います。

(文: UEDA / 挿絵:αβγ)


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